「水施餓鬼」
今から10年くらい前のことです。
当時、友人に勧められてとある真言密教系のお寺にちょこちょこ寄っておりました。
決して怪しい宗教団体ではありません。ちゃんとした真言宗のお寺です。念のため。で、このお寺で水施餓鬼をするので参加しないかと誘われ、
友人と二人でその手続きをしたんですが、それから数日後のことです。この友人が私のアパートへ遊びに来まして、仕事の愚痴を言い合っていたんですが、
だんだん空気が冷たくなり、やばい雰囲気が漂い始めてしまって……。
7月のまだ梅雨明けしてない頃でしたが、
マジで気温がすーっと下がっていく感じでした。私は、所謂、見えてしまう人間ではないんですが、
時々それらしい映像が頭に浮かぶということがありまして、
この時は友人の勤めている会社の地下室からごぼごぼと泥が噴出してきて、
そこから餓鬼のような亡者が何人も這い出してくるという、
かなり不気味なものが見えてしまったんです。「会社はどこにあるんだっけ?」
「新宿。あの会社に行くと冷房が効きすぎて寒い。
しかも、地下室の床に泥が落ちたようなしみがあって、それが気持ち悪い。
いくらふき取っても消えないし……」新宿のどこにあるのか詳しい場所を聞いたところ、
ずっと以前、心霊スポットだと別の友人に教えられた場所のすぐ近くでした。要するに、昔の投げ込み寺があった場所の近くなんです。
こりゃまずいわ、土地の障りというか、地縛霊の典型じゃないか、
しかも、泥田か沼を埋め立ててるな、と思っていたら、いきなりこの友人が、
わーっ
と顔を覆って泣き出しまして……。
はっきり言って、私はこっちの方が怖かったんですが、
友人はわーわー泣きながらも、何で泣くのか判らない、と言ってんですね。しかも、自分の膝に男の生首が転がり落ちてきたとか、
悲しくて悲しくて仕方がないとか、もの凄く残酷な殺され方をしたとか言い出しまして……。どうやら、私らが水施餓鬼をやったせいで、
我も我もと無縁仏様が寄って来たようでした。
水に関する霊が寄って来ると気温が下がる、とは後日、お寺関係の人に聞いた話です。で、泣き喚く友人をどうすればいいのか判らなかったんですが、すぐ手元には
般若心経と不動明王経がありましたので、取り敢えずそれを唱えることにしました。
何十回唱えたのか覚えてませんが、友人は泣き止み、寒気もなくなったので、
もう大丈夫だろうと、この夜は寝ることにしました。もっとも、この時の時刻はしっかり丑三つ時☆
もう笑うしかありませんね。
この日はこれで収まったんですが、所詮は素人の応急処置。
この日から部屋に誰かがいるようなうろうろしているような、
ざわざわした気配がするようになりまして……。仕方がないので、水施餓鬼をやったお寺さんにお願いして「上」へ上げていただきました。
帰宅したら、水で洗ったように部屋の空気がきれいになっていたので、驚きました。ありがたや……。が、しかし、
3体ほどまだ居残ってまして、それがどうやっても動いてくれない。
これはもうどなたかに引き取ってもらうしかないので、新宿の近くの神社へと参りまして、
お願いして来ました。なかなか面白かったですよ。
鎮守の森を歩いていると、一人二人と離れていくのが判るんですよ。
境内までついて来たのは1体だけでしたが、手を合わせたとたん、
いきなり太鼓が鳴り響きまして、ぎょっとしていたら、丁度午後二時でした。
面白いことに、この時、拝殿の扉(?)が開いて、中から片手がにゅーっと出てきて、
それが私の後ろに立っていた最後の一人をいきなり掴み上げ、そのまま引っ込んで
しまうという映像が頭の中に浮かびました。どうやら無事、引き取ってもらえたようです。ありがたや……。