「ある金融商品での話」
2007年春、付き合っていたマサオ(仮名)とユウコ(仮名)は、
雑誌で最近FX(※)なるものが流行っていることを知りました。
資産形成はしっかりしておかなければいけないねなどと話はし
つつも、具体的にどうすればよいかわからなかったのですが、
これを機にお互いやってみようかということになったのです。(※)FXとは外国為替証拠金取引という金融商品の通称で、
安いところでドルを買って高いところで売るなどして利益が
上がる仕組みです。ドルが、円が、ユーロが、…など一通りの仕組みを勉強し、
いざ業者に口座を開設して取引を開始することになりました。男「ドル円を118円で10枚(※)買ってみたよ。」
女「私も買ってみようかな、でも下がると怖いし...。」
男「絶対上がるよ、今のこんな日本の状態じゃ円はこの先も
大きく売られるはずだし、ドルも上がっていくよ。」
女「そうだね、じゃあ、私も1枚ぐらいやってみようかな。」(※)1万通貨単位を枚と表現し、この場合10枚なので10万
ドル(1180万円)の取引をしたことになります。
FXの仕組みとして実際に10万ドル分の手持ち資金がなくても
売買は可能です。取引の損失がでれば、手持ち資金でカバー
できればよいというようなイメージです。この時の男の資金
は、まだかなり余裕がありました。それからマサオは取引枚数を増やしていき、ドルは上昇して
いきます。その結果、資産はうなぎのぼりとなります。
当然、羽振りがよくなっていき、ユウコも高価なブランド物
を買ってもらったり、方々へ旅行へ出掛けたりなど恩恵をう
けます。男「資産形成なんて楽勝。これからもガンガンやってやる!」
女「私はマサオのようには増えてないけど、マサオが増えて
いるのを見ると自分のことのようにうれしいよ。」
男「ほんと、FXやっててよかった。ユウコも、これからだって!」このころマサオは、100枚まで取引を増やしていましたが、
少し前から不思議なことがおこりはじめていました。
知らない間に、取引枚数が少しずつ増えていたのです。
1枚・2枚・3枚...と。元来、大雑把な性格もあり、また
業者のミスだったとしても資産はそれによって増えている
ので気にせず、むしろ好調な時にはラッキーが転がり込む
ものなんだと、豪語していました。男「絶好調!」
女「すごいね〜。もっと頑張って!私も頑張るから!」旅行三昧、買物三昧で、二人はとてもいい思いをします。
そして盆。相場は、近年まれにみる暴落となります。
窮地に追い詰められたマサオは、業者に強制的に決済される
のを恐れ、知人や親戚から必死になってお金を集めます。
それでも間に合わず、 相場があまりにも急変したこともあって、
業者にも多額の 金額を払わねばならない事態となります。
もちろん、必死になって集めた金額も、
ほんの一瞬で吹き飛んだのでした。
その後、消費者金融に手を出し...。ユウコも姿を消します。
マサオが、あまりに悲惨な状態となってしまったので、
ユウコが逃げるのも当然です。...
机の上に雑誌をおいたのはユウコ、1枚・2枚・3枚...と
取引枚数を増やしたのもユウコ、旅行先でもっと取引を
増やしてみたらと提案したのもユウコ、けれども
ユウコは取引を一切していませんでした。以前、ある女性がマサオに交際を迫られていたのですが、
それを断るとマサオは逆上、社会的にひどい仕打ちをし
たのです。その女性の友人がユウコです。現代版のお
菊さんでしょうか...。※FXが酷い金融商品というわけではありませんので、あしからず。