「ゲロ王子」
「フィールド イメージ システム MX」
ニコン製 定価10万円。
(システム構成パーツ)
カメラ用ニコン35ミリ用300oレンズ/アダプター
/CCDユニット/モニター。
CCDユニット:単3×4本/連続15時間可動
モニター :単3×8本/連続6時間可動
開放F値 4 CCD素子27万画素
ホワイトバランスはオート
全長 約40cm程
ビデオなどのデジタルズームとは、比べ物にならない位、
鮮明な画像を、3000o(300o×10倍)の倍率
で見れる超望遠レンズ。
モニターを見ながら、CCDユニットを通しビデオに
可動画像の録画も可能。
一般的に、カメラのプロ用レンズなら、仮に3000o
レンズが実在すると考えた場合、単純に全長は 3m、
価格は 3000万円。消費税が 150万円。
(通常、野球場のバックスクリーンから、バッターボッ
クスのバッターの表情をアップで撮るのが1000o超
えレンズ)
つまり、3140万円も、お得な超望遠鏡を、多少擦り
傷のある、お古ですが、親戚の叔父さんから、貰った
中学生のB君は、物珍しさも手伝って、放課後になると、
学校の裏山の山頂に登り、高台から、町の観察をするのが、
最近の日課となっていました。
小遣いで中古の三脚だけは自分で購入し、相変わらず
町の中の自動車、バイク、建物、通行人、自転車などを
モニターに表示させ「町ウオッチング」を楽しんでたそうです。
そして、それを見てしまったそうです。
とある5階建てのビルの屋上をふら付きながら、
男が一人フラフラ歩いているではありませんか「屋上で、何やってるんだろ?」
B君は、あれこれ想像しながら観察を続けました。
紺色の背広姿、濃い赤色ネクタイ、20代のサラリーマン、
日本人離れした顔立ち、いや、どうやら外人のよう、
以前TVで見たイケメンの英国のウィリアム王子に少し
似てます。
(※B君の悪い所は、若い外人の男は全員「ウイリアム王子」
に見えてしまう事でした)
そこで、そのフラフラ屋上をさまよう、その外人に
「王子」と言うあだ名をつけました。
相変わらず、つまづきかけたり、よろめきかけたりしながら
ヨロヨロと歩いてる王子になにか嫌な予感を感じます、「もしかしたら飛び降り自殺?」
「何かの悪い薬?覚醒剤?シンナー?あるいはただの酔っ払い?」
どうしよう、もしも屋上から飛び降りたら大変です、
警察に連絡しようか、誰かに知らせに行こうか、
でもこの裏山から下へ下りるだけでも距離があり、
間に合いそうもありません「困った」と思ったその時、
モニターの王子は突然、かがみこんだのです、
取り合えず飛び降りでは無さそうな雰囲気にホッとするB君、
「やっぱり酔っ払い?でもこんな夕方前からお酒?」と思った、
その瞬間、王子は、いきなり口からゲロを吐きはじめたでは
ありませんか「ああ、やっぱり酔っ払いか、えっ?」
その王子は、まるで水道の蛇口から水が出るかの如く、
休みなくゲロを吐き続けているです、「な、何だあれ?」
王子はなおもゲロを吐き続けます、距離がありすぎ、
音は聞こえませんけど想像は出来ます「オエエエェェェェェェェェ〜」
です、多分、「えっ?」信じられません、
どう見てもゲロの量がハンパではないのです、
もう王子の体格の倍以上のゲロ、言葉を失うB君、
四つん這いで後ずさりしながらゲロを吐き続けてる王子、
訳が分らず、あっけに囚われてる間にゲロの量は、
既に王子の数十倍の小山、もしかしたら1トン
近くものゲロ?いったい、いつまでゲロをはき続ける気?
その時、王子の後ずさりが停止。
どうやらゲロの放出が終了したみたいです、
そして、スクッと立ち上がると、ハンカチで口のあたりを
ぬぐうと今度は、しっかりとした足取りでスタスタと出入
り口へと消えて行ったそうです、
後に残ったゲロ山、あの大量のゲロはどうなるんだろ?
「なっ、何あれ?」屋上の出入り口、水タンクの裏などから、
三毛猫、ブチ猫、シャム猫、チンチラ、アメリカンショート
ヘア、アビシニアン、ヒマラヤン、ペルシャ、白猫、黒猫、
赤猫など、100匹以上はいます、もはや数えきれない程の
大量の猫がどこからとも無く現れ、一組も喧嘩することなく、
一斉に王子の吐いたゲロを食べ始めたではありませんか。「ゲゲェ」
B君、呆然。
猫達は夢中で、しかもかなりの速さと勢いでゲロを食べ続
けているのです、しまった、こんな事ならビデオを借りと
けば良かった、この異常な出来事を記録として残せなかっ
た事に本気で後悔してるB君です、
もはや、いてもたってもいられません、時間の経過とともに
猫に食われ減って行くゲロ、B君は、どうしてもゲロ山と大
量の猫を自分の目で見たい衝動にかられ、急いでシステムを
ばらしケースにつ積め、三脚をたたみ、山を駆け下りました、
確かあのビルは3丁目のテナント募集中の通学路から見かけ
るビルです。B君は2丁目〜3丁目へと必死で走ります、いつもの裏道が
水道工事中で、遠周り、走りながら野次馬集団と、倒れた
原付と斜めに止まってる車どうやら交通事故があったらしい
現場の脇を通過し電柱横で3人のおばさんが井戸端会議をし
てる角を曲がり、引越し業者の作業中の車の横をすり抜け、
歩道の段差でよろけ体勢を崩しかけ、何とか持ち直し、
あぶない、家かフェラーリが買える程(3000万円以上)
お得な望遠鏡を、たかが、ゲロと猫集団の為に壊しては一大
事です。
もしも、この望遠鏡を壊したら、一生涯、街で見かける猫に
「負け組」と言われる気がします、
しっかりとケースを抱え直し、なおも走り続けます、
前方から警察車両が現れ後方へ、多分、
事故の現場検証へ行くのでしょう、さて、小さい写真館を
超え左前方に100円パーキングがあり、その横に、やっ
と3丁目の5階建てビルにたどり着きました。
いったい何故自分は、ゲロ山と集団猫の為に、こんなに必死
で走ってきたんだろう?そんなにゲロと猫が見たいのだろう
か?と心の中で疑問を抱きながらビルの出入り口へとたどり
着きました。
「ゼイゼイゼイゼィ」思いっきり駆けて来たので息切れしか
けてるのを深呼吸で整えながら落ち着かせビルの中へ飛び込
みました、誰もいません、しかもエレベターには「故障中」の札が、
非常口へ回り階段を駆け上がります、階段の途中にハンカチ
が落ちてます、あの王子の物でしょうか?
3階、4階、5階、やがて屋上へのドアの前へ、一瞬ためら
い、ノブを掴むと一気にドアを開けます「ううっ、むうっぷぅぅ」
B君は、鼻を摘みました、凄まじい、ゲロ臭気です。
もしも、付近を鳥でも飛んでたら、墜落しそうな異常な臭い。
しかし、所どころ、残りゲロのこん跡はあるものの、大量の
ゲロ山はおろか、ゲロを食べた大量の猫達も、こつ然と消え
てしまってるではありませんか、いったい全体、何をしに
自分はここまで、走ってきたのか?と、ため息を1つ吐くと
急に、鼻を摘んでる指の隙間から進入してくるゲロ臭気と、
脳裏に焼きついてるゲロ吐き王子の残像と、ゲロ食い猫軍
団………、
うぷっ、おええぇぇぇぇぇぇェェェェェェェ〜〜〜B君は、思わず、その場で貰いゲロをしてしまい
「望遠鏡で目撃した現場などへは、何があろうと接近してはいけない」
と自分に言い聞かせ
そして、思わず心の中で、こうつぶやいたそうです
屋上の「ゲロ吐き王子」……と。(完)