「未確認浮遊怪光体『火球』」

軽井沢となりの小諸から車で40分程移動した山中に数件の別荘
が点在する場所があり、その一番奥にNさんの叔父所有の別荘が
ありました。別荘といっても過去、大工の棟梁であった叔父が若
い頃趣味で建てた手作りログハウスです。ただ、頑丈に制作して
おり、もう30年以上、台風、地震にすらビクともしてないしっ
かりした造りでした。現在、叔父は高齢にて長距離の移動が困難
で、Nさんへ「子供と一緒に何時でも好きな時に使ってくれ」と
言われており、Nさんも夏休み限定にて使わせてもらう御礼に、
別荘の修繕、付近の草刈、掃除などをしに来るのが年に一度の行
事になってました。
別荘は、電気、ガスはありませんが、裏の川の湧き水をひいた
天然水道に、五右衛門風呂もあり、車で10分先のふもとににコ
ンビニもあります、息子、修一( 小4)の夏休みに合わせた、
今年で3回目の夏の出来事だったそうです。
それは、もう夜もふけ、ランタン(ランプ)と携帯ラジオでの
多少遅めの夕飯時の出来事です。
修一がいきなり

「誰か来たよ」

とポツリと一言

「何で?」

と問うと向かいの窓ガラスの向こう
に車かバイクのライトが見えたと言うのです、それは有り得ませ
ん。別荘の後方は、林と裏山しかなく、道すらないのです、自転
車や人の懐中電灯より明るい光だったそうですが、そんなバカな、
で、それを説明してたら、Nさんも居間の窓ガラスの外を横切る
かなり明るく青白い光を目撃し箸を落としました。ラジオを切る
Nさん、きき耳をたてても無音です、自転車、人のライトなどで
もなさそうです、

物騒な事件が続いてる昨今、とりあえず、光の原因を突き止める
べく席を立つNさん、恐る恐る玄関を開けゆっくりと首を出すと、
そこには、遠くの街灯、別荘の明かり、虫の鳴き声の他、闇以外
はなにもありません
その時、

「父ちゃんこっち」

と修一の叫び、振り向くと修一の指差した窓の外を光が右から
左へ移動してるのが見えました。なら、向かって右の角から
光が現れるはずだと左一点を注視し続けるNさん、ところが、
「うわぁッ」と驚きの声を上げ、その場へ尻餅をついたのです。
Nさんの不意を付き何故が光体は左から出現し5m程先の地上約
1mを直径40〜50cm大の青白く燃えてる円形浮遊光体が空
中で停止してるではありませんか。
かなり以前、TVの木曜スペシャル、ソ連の「森の謎の火球」
フィルムを思い出しました、それは赤い光の発光物体が森から
出たり入ったりし最後は森の中へ消えてくものでした。
にてます。Nさんは恐怖を感じ、ゆっくりと玄関から後ずさり
します、すると青白い火球体も浮遊したまま付いて別荘内に侵入
して来ました。床を這いながら叫びます

「修一、窓から車の所へ逃げろ」
「わぁっ、父ちゃん何それ?」
「分からん、とにかく逃げろ、急げ!」

あわてふためき網戸を開け外へ飛び出す修一、
それを見、安心し、Nさんも一気に立ち上がり窓から飛び出します。
車のそばで修一が突っ立ってます

「どうした?」
「父ちゃんカギがかかってるよ」
「!?」

そうだ、車のキーは寝室のベッドの上に置いてたのです、

「父ちゃん後ろ!」

振り向くと先ほど脱出した窓から、火球も出て来たではありませんか

「修一、隣の別荘まで走れ」
「うん」

全力疾走で駆け出す親子、ノロノロですが火球も付いて来てます。
もしかして、火球が何らかの電位を帯びてて、人体の帯びてる電位
に磁石のごとく引き合ってるのではないかと走りながら推理するN
さんでしたが、息子の走りにじれったくなり、修一を抱え上げると
全力で走り始めました、
やがて家7件分程下隣りのTさんの別荘にたどり着き玄関を叩きます。
やがて中からTさんが現れ「どうしました?Nさん」と言う間もなく
玄関内になだれ込みドアを閉めるNさん親子、やがて、ドアの小窓の
外が火球により明るくなり、何らかの異常を感じるTさん、Nさんは
説明します、

「何なのかは不明ですけど、人玉が火球みたいなものが裏山から
現れ追われています」

ゼイゼイ言ってるNさんを見かねTさんはリビングへ案内し麦茶を
出してくれました。今一つ、納得出来ないTさんでしたが
「安全になるまでここへ居たらいいよ」と言ったその時

「ガチャ」

と嫌な音、「あっ、家の犬は勝手に玄関を開けて出入りするんだ」
とポッリと言うと、暫くして犬と浮遊火球がリビングへと入って
来たではありませんか

「窓から逃げろ」

Nさんは叫びます。修一は窓を開け飛び出します、続いてTさん
Nさんおよび、ついでに犬も外へ

「Nさん、何だいありゃ?」
「分かりません火球の一種かと思われます」
「何だって、あんな物を連れてきたんだい?」
「連れて来たんのではなく付いて来たんです」

まるで落語の大家と熊さんとの会話をしながら取り合えず下の
Kさんの別荘へと走る3人と犬、後ろを見ると、青白かった火球が、
何時の間にか赤い光体に変化し、しかも直径が2m程に膨張して
いるではありませんか。

「どうすりゃいいんだNさん?」
「分かりません、とにかくDさんの別荘まで走るんです」

と3人と犬と火球の夜中の奇妙なマラソンは、更にDさんの別荘へ
と続きます。やがて、命からがら呼吸を乱しながら、Dさんの別荘
へとたどり着きました、鍵のかかった玄関のドアを必死で叩きます。
ドアには小窓があり、やがてそこからDさんの顔が、所が、Dさん
の目に映った光景は顔面真っ青の2人の男の死にも物狂いの形相と
後方から接近しつつある2mの火球です。ただならぬ危険を感じた
Dさんは、素早くソソクサと家の中へ消えてしまいました。火球が
10m付近までノロノロ接近してきてます。とにかく逃げよう、
Dさんの別荘を後に、また3人と1匹での逃走は続きます。3人と
も息が荒くなり「も、もう駄目だ」とTさん、「がんばってTさん」
と励ますも、Nさんも自分もそろそろ限界だと感じ始めてました。
けれども逃げる以外にはなす術もないのです。Nさんは最後
の力を振り絞ってTさんと修一の手を掴み2人を引っ張り駆け出
しました。

「どうすれば、あの火球から逃れられるのか?」

必死で考えますが何も思い付きません、その時でした、Nさんは
道路の石につまづき、すっ転んだのです。
当然2人の手を掴んでいたので2人とも道連れ、

「ぐわぁぁっ」

ドサッ、倒れ込む3人と、その場へ伏せる犬   

「ああ、もう駄目だ」

絶望が3人を包み込みます、もはや、3人にはその場に顔も伏せ
ジッとしてるしかありませんでした。ゆっくりノロノロと接近し
てくる火球、片目で様子を伺うと火球は3m以上に巨大化して
おり、更に明るい赤火球へと変化浮遊移動してます。

「あッ?」

火球は3人の上空を通過し、3m、5m、10mと距離を開け
やがて20m離れると5〜6m近くに巨大化し、そして凄まじい
爆発音と閃光を残し大爆発、付近は一瞬昼間のように明るくなっ
たそうです。

こうして、3人の火球体験は終わりました、NさんとTさんは話
し合い、火球タイプの浮遊プラズマだと言う結論に達しました、
今回の件は誰にも言わないと決めたのでした、どうせ人に話して
も信じてもらえずバカにされるだけです、なにせ2人は、筋金入
りの超常現象絶対否定派だったのです。
その後、TさんとNさんの所へ通報を受けた警察がやって着ました、
何でも「夜中に数人の暴走族がタイマツを持ち、ここらを走り回り、
ダイナマイトを爆発させ遊んでたとDさんから通報があった」そう
です、2人は答えます「知りません」「Dさんのイタズラ電話では
ありませんか」と、とぼけ通しました。
その後、Dさんは、深夜のイタ電犯として、警察からさんざん
説教されたそうです。


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