「霊感ナース」
私の親友T子一家は筋金入りの霊感家系。彼女の職業は看護士、
ライフワークは写経(ダッシュボードに常備)、ってな具合です。
病院勤めの定番話、夜に空き部屋からナースコールが!とか、
廊下を白い足が!みたいなのは日常的に起こり過ぎてもう
慣れちゃったとか。そんなT子とじいちゃんの話を少々。【コーヒーごちそうさま】
T子のじいちゃんは、今でこそボケボケだが、若い頃から
超霊感人間で昔からそのテのエピソードには事欠かない。
そんなじいちゃんがある夜すやすや寝ていたのだが、どうも
枕元に人の気配を感じる。目を開けてみると、それはもうずっと
昔に亡くなったじいちゃんのおばさん。和服姿で表情もなく
じっとじいちゃんを見ている。
「おばちゃん、どしたんぞ?」と聞くが時折かすかなうめき声を
あげるだけ。
ひとつ奇妙だったのは、おばさんの体が斜めに傾いていたこと。
朝起きたじいちゃんはどうしてもそれが気になって、その日の
うちに墓参りに行ったところ、荒らされたのか経年によるものか、
なんとお墓が斜めに傾いていた!じいちゃんは墓を直して
周囲を掃除し、コーヒーとお経をあげて帰った。
その夜じいちゃんが寝ていると、また枕元に人気を感じる。
目を開けるとおばさんだった。まっすぐに背筋を伸ばして
座り微笑を浮かべている。
「おばちゃん?」と声をかけたじいちゃんに、おばさんは
静かな声で「コーヒー、ごちそうさま」と言って消えていった。
【あなたの背後にいる人は】T子の話。
昨年はT子にとって散々な年だった。完治したと思っていた
病気が再発したり、無理をおして一人暮らしをスタートしたら
空き巣に入られかけたり、通いなれた道で車の自損事故を
起こしたり。現在も体や頭が重くて気分が晴れない状態。
働き過ぎによる疲れと注意散漫のせいだ…と思っていたが、
ある日入院してきた患者から一言目に指摘された。「あなた
最近悪いことが続いてない?祓ったほうがいいよ」
霊感が強くて日頃から信心深かった彼女なので、勧められる
まま患者さんの知り合いの"先生"を訪ねた。少し胡散臭い
話のようだが、その先生は知る人ぞ知る霊能力者で、平常は
仕事をしながら、週末に無償で本当に困り果ててツテを頼って
来る人々の相談にのっている方らしい。で、霊視の結果。
「あなたの背後にいる人は、あなたのひいおばあさんの姉か
妹。子孫が自分のことを思いながら墓参りしてくれないのが
悲しいって」「特にあなたの体調不良は彼女が引き起こして
いる。自分の苦しみを感じてほしいと」
身近な親族の霊が生きている人間に害を及ぼすこと驚いた
T子だが、すぐに先生と墓参りをした。
新鮮なサカキを活け、お線香をあげ、無心で先生とお経を唱える
うち、ぱっと頭のてっぺんに光を感じた気がした。その瞬間、
「ありがとう」という声が耳元に聞こえ、悲しくないのに
堰が切れたように涙があふれ出た。
見れば線香の煙がどこまでもまっすぐに立ち上っている。
(生きている者の祈りの心が死者に通じたサインと言われる。)彼女の現在の体調はすこぶる良く、以前よりさらに過重労働
気味なのに文句を言いながらもパワフルに働いている。
背後にいた親族の霊が新たな守護霊となったかどうか、私は
聞いてないが、親族の霊が不満や不平のある時に現れるのは
大抵T子かじいちゃんの前であることは事実だ。そんな霊の
気休めになれば、とT子は母親とともに写経にもいそしんで
いる。