「心配する祖母」
私が短大を卒業して就職してすぐのことです。
夜中にふと目が覚めて、トイレに 行きたくなり、
階段を降りてまん前にあるトイレに行きました。
家の作りは、 1・2階は自営業をしている父の仕事場、
3階に台所や風呂、トイレ、居間、 両親と弟の部屋があり、
4階が私の部屋と屋上です。
トイレのドアを背に立つと、 3階の住まいの玄関のドアが見えます。
用をすませてトイレから出ると、その ドアのところに
私が7歳の時に亡くなっ た父方の祖母が立っていました・・・。
明らかに、幽霊ですよね。もう、この世の人ではない人がいたのですから、
びっくりしました。影が薄いっていうんでしょうか、そこにいることはいるん
ですが、テレビや映画に出てくる幽霊のように、触ろうとしたら、
手が向こうに突き抜けてしまいそうなかんじです。
祖母は悲しそうな、心配そうな顔をしていました。
祖母にとって私は初孫でしたので、とってもかわいがってもらいました。
こわくなった私は階段を駆け上がって自分の部屋に戻り、布団を かぶって
「おばあちゃ〜ん、心配することはないから、向こうに帰ってください」
と念じました。朝になり、夜中のできごとは夢だったのでは?と思いました。
朝食の時、両親に 「ゆうべ、おばあちゃんが来たよ」と話しました。
実は父も何回もやはり夜中に トイレに起きた時、同じところで祖母を見ているのです。
たまに「おふくろが 来た」と言っていました。ちなみに今でも来ているそうです。
それまでに、父は 出張先で泊まった旅館で幽霊を見ていたり、
高いところで仕事をしていて、 落ちそうになったら誰かが引っ張ってくれて、
「おふくろが助けてくれた」など と言っていました。父はあっけらかんと、
「ちゃんと挨拶したか?」と私にきく ので、 「しなかったよぉ〜。こわかったもん」
と答えたら「ばかもん!! おばあちゃんだろ!何がこわいことあるか!
俺はちゃんと挨拶するぞ!」と 怒られてしまいました。
私が祖母が着ていた着物のことを「おばあちゃんがよくお出かけの時に着ていて、
白地に柄が・・・」と話すと、父が見る祖母も同じ着物を着ていると言います。
母もその着物のことを覚えていました。祖母は父が祖父とケンカをしていたり、
仕事に行き詰まっていたりする時に出てくるそうです。怒った顔をしていたり、
悲しそうな顔・心配そうな顔をして。たまに父の名を呼ぶそうです。
父が 「もう心配しなくていいよ。大丈夫だから」と言うと、
すぅ〜っと消えていく そうです。
社会人としての一歩を踏み出した私を心配して来てくれたのでしょう か。
それきり祖母の姿を見ていません。