「もういいかい」

「もういいかい」

何かの物音で、ふと、目が覚めました。
それは、かすかな音でしたが、低くこもった様な音で、
テレビから聞こえてくる音のようでした。
何とか、そのまま眠ろうとしましたが、気になると、
ますます眠れなくなりました。
舌打ちしながら、寝床から起きて階段の上から1階の
居間を覗くと案の定、テレビの青白い光が床に反射
するのが見えました。

どうせ、娘が消し忘れたのだろうと思って階段を降り、
居間に入ったところ、何か黒い影が目に入りました。
ぎょっとして、よく見ると、
小学生くらいの男の子の後ろ姿でした。

テレビでは昔の怪獣ドラマを映していました。

そのとき、突然はるか昔の記憶がよみがえりました。

……………………………………..

それは、まだ私が小学6年生の時で、夏休みももう終わ
ろうとしていた、ある夕方のことです。
母からもらったスイカを食べながら、テレビで怪獣ドラ
マを見ていました。

そこに、よしお君がおばさんに連れられて、が引越しの
挨拶にきました。よしお君も、母からスイカをもらい一
緒にテレビを見ることになりましたが、よしお君は目が
悪いのか、私の前に座り、テレビを食い入るようにみて
いました。

夏休みが終わって、よしお君とは、クラスが違うため学
校に行っても遊ぶことはありませんでした。10月になっ
たある日、学校帰りに偶然によしお君と道で会い、基地
に行くことにしました。

そのころ学校からそんなに遠くないところに基地があり
ましたが、危ないので、学校からは行かないように注意
されていました。
よしお君は、まだ基地を見ていないということなので、
僕たちはいけないと知りながらも、見に行くことにした
のです。

基地につくと、そこには、見たこともない大きなダンプ
カーが停まっていました。僕たちは、そこで、鬼ごっこ
をして遊ぶことにしました。

よしお君が鬼の番で、
「もういいかい」と、いった時です。
急にダンプカーが動き出して、

「ぎゃっ」

という叫び声とともにランドセルが飛ぶのが見えました。

僕は、真っ青になって、家に走って帰りました。怖かっ
たので、振り向くことができませんでした。
母には、気分が悪いとうそをついて布団の中で震えてい
ました。いつしか朝になって心配する母をあとに学校に
行きました。
よしお君がどうなったのかどうしても知りたかったので
す。

学校に着くと、よしお君の机の上に大きな花瓶が置いて
あり、女生徒が泣いていました。よしお君が死んでしま
った事を知りました。
僕は、昨日一緒に遊んでいたことがばれるのではないか
と思って気が気ではありませんでした。
朝礼での校長先生の話でよしお君が一人で遊んでいたた
めの事故だと言ったのを聞き、後ろめたい気持ちと、安
堵する気持ちが一緒に沸いて来ました。

……………………………….

そこで、現実に戻りました。
まさしく、その子の後ろ姿は、
あのときのよしお君の後ろ姿です。
そして、突然、その子が急に

「もいいいかい」

と言って、振り返りました。
頭から血を流し、目は飛び出していました。

 

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