「侵入者」

7年くらい前のことです。
当時、心身ともにまあまあ満足の一人生活を送っておりました。ところが……。

当時住んでいたアパートは、ドアが二重になっていました。
先ず、階段をとんとんと上がってきました。
その次に、外側のドアの鍵を差し込んで回して、内側の鍵を回して……。

うん?誰にも鍵を渡していない。
入居するときに、鍵をシリンダごと交換してあるし。

あっ、入ってきた。
玄関から7-8歩歩いて、私が寝ているベッドに近づいてくる。
男性2人。
1人はベッドの足元を回って左下の方で止まった。
2人とも古い革靴はいてる。
もう1人。何? なんで? 何よこれ。
体温が感じられる。
私の肩の右側、ベッドに腰掛けた。
それと同時にベッドが彼の体重で沈んで、彼の体温が伝わってくる。

ええッ? 夢じゃないんだ。夢とは違う。
二人はしきりに何か相談してる。
服装もはっきり覚えてる。自分で洗濯したみたいなよれよれの
着古しの背広上下。
格好はそんなだけど、何ぜか今で言うホームレスおじさんの
類ではないと確信する。

初めはこちらも緊張して、コチコチになりながら、そして右肩が
少し下がった状態で、しかも体温を感じながら話が終わって出て
行ってくれるのをじっと待っていた。

彼らが出て行った後、電気をつけてドアを点検した。
ちゃんと鍵もかけられている。そりゃそうだ、さっきドア開けて
鍵かけて、もう一枚ドア開けて鍵かけて、階段を下りていったもの。
私聞いたもの。

2回目からは、またまた来た来た、という感じ。不思議と恐怖感はない。
何回目かに、勇気を出して隣家の主人に聞いてみた。
私「夜、変なことがある。人が部屋に入ってくるのよ。
夢かもしれないけど、何回もある」
「ああ、ああ、そりゃわかるよ」←まったく動じない
私「えッ、私わからない」
「この団地が建つ前に、政治結社の連中がこのあたりを連絡場所に
してたからさ。何か相談してたでしょ」
私「そうなの」
「当時この辺りは畑でね。首都に近いし、北への逃げ道にも
あたってるし。結局はここら辺りでたくさんの人が殺された。
奴らはわれわれには何もしないから、場所かしてあげれば?」
私「うん。でも、われわれなの? なんで“われわれ”なの?」
「この辺じゃよくある話よ。よくある話ってこと」
私「そう、じゃあ安心した、ありがとう」

おいおい、安心するって怖くないのか。
そうなのよね、それから何回か同じ情況が……。

北京望京地区のアパートでのお話でした。


  おしまい   

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