「怖がらせるつもりが……」
去年の夏、友達4人と心霊スポットへ行ったときのことです。
そこは市街地から1時間ほど車で走った場所にある
山奥の廃業したホテルで、借金で首が回らなくなった
オーナーが首を吊って無理矢理首を回そうとしたという
曰く付きのところでした。
なんでもオーナーの霊がホテル中を徘徊し、人を見かけると
誰彼かまわず「すいません」と謝るという噂がありました。
借金取りに謝っているのでしょうか。
幽霊のくせに低姿勢なのが不思議で、
あまり恐くないスポットとして有名な場所です。私たちは4人で行ったのですが、誰も霊感がないため
何も起こらないだろうとみんな余裕そうでした。
こういう展開になるであろうことは最初から予測できました。
そこで私はある悪戯を思いつき、実行したのです。
その悪戯とは、私が幽霊をみて怯え泣き叫び狂ったようになり、
挙げ句の果てには痙攣まで起こして気絶するというものです。
霊感がないんだから、実際には幽霊など見てません。演技です。
頃合いを見計らい、私は悪戯を開始しました。「でたでたでた! あそこあそこ!!! やめてえ!!!」
などと騒ぎに騒ぎまくり、予定通り気絶のふりをしました。
他の3人は予想外の出来事に怖がり、みんな叫び声をあげながら
逃げていきました。「やった!」と成功を確信した私は、
完璧をきすためじっとして物音を聞いていたのですが、「バタン! キキィ! ブルルルル〜」
という嫌〜な音を聞いちゃったんです。
私たちはここまで一台の車に同乗して来ました。
あれは私たちの車が走り去った音だったです。
つまり、私はこの山奥の廃墟に置いてけぼり。
ひとりぼっちで。携帯は車の中だし、
周りには民家もありません。あったとしても、
この深夜に相手にしてくれるわけがありません。
こんな場所でみんなが帰ってくるのを1人で待つのは恐すぎたので、
私は山を下りることにしました。下りならばなんとかなるだろうと。深夜に1人で山道を下っていくのは、本当に恐いものです。
ビクビクしながら、道の端を早足で歩いていました。
30分ほど歩いた頃でしょうか。道路脇に車が止まっています。
よく見ると私たちが乗ってきた車でした。
でも、中には誰もいません。
呼んでも返事はないし、周りを探しても見つかりません。
そのとき、ガードレールの向こう側から何か音が聞こえてきます。ガサガサ、ガサガサ、シャリシャリ、シャリシャリ。
何だろうと思ってガードレールの向こうをのぞいてみると――
「ワッ!」
と大声が。
1人がガードレールの下の崖にへばりついて隠れて、
私を脅かすために待っていたのです。
私は本当に心臓が止まるほど驚きました。
今度は本当に泣いてしまったくらいです。
彼はごめんごめんと謝りながら車へ連れていってくれました。
車へ近づくと、今度はいきなりトランクが開き、「ワッ!」
トランクに隠れていた1人でした。
落ち着いた後、車に乗ろうとドアを開けたら、
車の下から手がでてきて足をつかまれました。
さらに冷たい物(後で缶ジュースと判明)を押しつけられました。
これには「ひぃいい!」と叫んじゃったくらいです。帰りの車内で問いただしたところによると、
彼ら3人は私のドッキリに本当に怖がって逃げたそうです。
でも、帰りの車の中で私を置いてけぼりにしたことに気付き、
戻ろうとしたところ、な〜んかおかしいような気がしたんだとか。
それで1人がこっそりと戻ってみると、私がテクテク歩いている
のを発見。これは騙された、と悔しい思いをしたんだとか。
急いで車に戻り3人で話し合った結果、騙しには騙しで対抗する
ことを決定。それで3人がそれぞれのポジションで私を待っていた
そうです。ドッキリ3連発にもうへとへと。
怖がらせるつもりだったのに、逆になっちゃいました。